「もっと質の高いチームにしたい」
「ただ集まって試合するだけじゃ物足りない」
そんな思いから、僕たちの草野球チームは“クラブチーム化”という道を選びました。
軟式野球の世界において、「クラブチーム」に厳密な定義はありません。
しかし、僕たちは「明確な目標を共有し、助っ人に頼らず自チームのメンバーで継続的に運営・成長していける組織」こそがクラブチームだと考え、その実現を目指してきました。
今回は、僕たちが8年かけて軟式野球連盟の県大会準優勝という結果にたどり着くまでに取り組んできた、具体的なチーム運営の仕組み、乗り越えてきた苦悩、そしてチームにもたらされた変化を、余すところなくお話しします。
草野球チームの運営やレベルアップに悩むあなたの、ヒントになれば幸いです。
なぜクラブチーム化を目指したのか? 理想と現実のギャップ
実は、チーム立ち上げ当初から、「将来的には本格的なクラブチームとして運営基盤を整え、全国大会で戦えるチームになる」という構想はありました。
参考にしていたモデルケースのチームも存在し、「自分たちもいずれは…」という漠然としたビジョンは共有されていたと思います。
しかし、現実は理想通りには進みませんでした。
メンバー集めに苦労し、毎試合のように助っ人を呼ばなければ試合が成り立たない。練習も不定期で、チームとしての一体感や戦術の浸透も難しい。クラブチームとしての活動を開始するには、時期尚早という空気が正直ありました。
さらに、チーム運営に対する考え方の違い、特に「勝利至上主義・競技志向派」と「楽しさ重視・エンジョイ派」との間の温度差は、内部での衝突を生むことも少なくありませんでした。
それでも、少しずつ理念に共感してくれるメンバーが増え、発足から3年ほど経った頃、ようやく固定メンバーが安定して揃うように。このタイミングで、僕たちは本格的にクラブチーム化への舵を切る決断をしました。
目的はただ一つ。
目標である「軟式野球連盟主催の全国大会出場」を実現するために——。
チーム運営の核:責任を分散する首脳陣体制の構築
まず、チーム運営を円滑に進めるための“核”として、以下の4名の首脳陣体制を敷きました。
- 監督: チーム全体の戦略・方針決定と試合での采配を担う指導者
- 監督補佐: 監督のサポート、選手とのコミュニケーション、メンバー調整役
- 統括キャプテン: チームマネジメント全般を統括。練習計画、出欠管理、連絡網など運営実務の中心
- ゲームキャプテン: 試合当日の現場リーダー。ウォーミングアップの指示、声出し、試合中の戦術実行の確認
この体制により、特定の個人への負担集中を防ぎ、それぞれの役割で責任を持ってチーム運営に関わる基盤を作りました。
監督
チーム全体の戦略・方針決定と試合での采配を担う指導者
監督補佐
監督のサポート、選手とのコミュニケーション、メンバー調整役
統括キャプテン
チームマネジメント全般を統括。練習計画、出欠管理、連絡網など運営実務の中心
ゲームキャプテン
試合当日の現場リーダー。ウォーミングアップの指示、声出し、
試合中の戦術実行の確認
属人化を防ぐ! 誰かが不在でも“止まらない”チームへ
社会人チームである以上、仕事や家庭の事情で毎試合全員が揃うわけではありません。首脳陣も例外ではありません。
だからこそ、誰か特定のリーダーがいなくてもチーム機能が維持される仕組みが必要でした。
監督が不在の場合は監督補佐が代行し、ゲームキャプテンが采配を引き継ぐ。統括キャプテンは常にチーム全体を見渡し、メンバーの状況やチームバランスを考慮して運営を調整する。
このように、役割と責任を明確化し、情報を共有することで、属人化を防ぎながらも信頼できるリーダーシップでチームを支える体制を構築していきました。
チーム活性化の鍵! メンバー全員での「役割分担」が生んだ変化
2025年度からは、チーム運営への全員参加を目指し、一般メンバーにも明確な役割分担をお願いすることにしました。
具体的には、道具管理係、グラウンド予約係、会計係、イベント企画係、SNS更新サポートなど、それまで首脳陣に集中していたチームマネジメントに関わる細かなタスクを、メンバーそれぞれの得意なことや状況に合わせて担当してもらう形です。
すると、驚くほどチーム内のコミュニケーションが活性化しました。
「今日の道具、こっちのバッグに入ってるよ」
「次の練習場所、〇〇で確保できた!」
「次のイベント、こんな企画どうかな?」
そんな役割に基づいた具体的な会話が、メンバー間の距離を縮め、チーム全体の雰囲気を明るくしたのです。
役割があるから、責任感が生まれ、主体的に声をかける。声をかけるから、関係が深まり、チームへの貢献意識が高まる。
この経験から、クラブチーム化における役割分担は、単なる作業分散ではなく、「全員が主役」となりチームを自分ごととして捉えるための重要なマネジメント手法だと痛感しています。
助っ人依存からの脱却: “本物のチーム感”と「共に戦う喜び」を求めて
正直に言うと、助っ人中心で戦う試合は、どこかまとまりに欠け、チームとしての一体感が生まれにくいものです。勝っても負けても、その場限りの感覚が拭えませんでした。
チームとして継続的に強くなるためには、固定されたメンバーで練習や試合を重ね、共通の目標、価値観、戦術理解を浸透させることが不可欠です。
普段からコミュニケーションを取り、共に汗を流してきた仲間同士だからこそ、阿吽の呼吸やアイコンタクトでの連携が生まれ、チームとしての総合力が高まります。
クラブチームとしてメンバー主体の運営に切り替えたことで、「ただ勝つこと」だけでなく、「信頼する仲間と共に戦うプロセスそのものを楽しむ」という、本質的な喜びを深く味わえるようになりました。
8年間の苦悩と葛藤の先に掴んだ、県大会準優勝という成果
チーム運営の改革を始めてから、すぐに結果が出たわけではありません。むしろ、ここまでの8年間は苦悩と葛藤の連続でした。
- メンバー間のモチベーションや目標意識の差からくる衝突
- チームの方針や練習方法を巡っての意見のすれ違い
- 予期せぬ主力メンバーの離脱や、それに伴うチーム力の低下
「時間と労力をかけて、ここまでやる意味があるのだろうか…」
そんな風に心が折れそうになった夜も、一度や二度ではありませんでした。
しかし、「全国大会出場」という明確な目標を常に確認し合い、諦めずにコミュニケーションを取り続け、地道な改善を重ねてきたことで、チームは少しずつ、しかし着実に前進していきました。
そしてついに、目標への大きな一歩となる、軟式野球連盟の県大会で準優勝という結果を手にすることができました。
勝利の瞬間も嬉しかったですが、それ以上に「このメンバーで、このやり方で、ここまで来られた」というプロセスへの達成感の方が強かった。これこそが、クラブチームとして“チームの力”が着実に育ってきた証だと感じています。
チーム力は選手だけじゃない! マネージャーとSNS活用がもたらす新たな可能性
クラブチーム化を進める中で、「強いチームは、選手だけでは成り立たない」ということも強く実感するようになりました。チームを陰で支えてくれる存在の大きさです。
その一つが、マネージャーの存在です。
僕たちのチームでは、マネージャーが試合や練習の様子を写真や動画で熱心に記録してくれています。これらの貴重な素材があるからこそ、チームとしてInstagramなどで効果的な活動発信ができており、チームブランディングにおいて非常に重要な役割を担っています。
選手たちの真剣なプレー中の姿や、ベンチでの和やかなコミュニケーション、試合前後のチームの雰囲気など、選手目線だけでは捉えきれない“チームのリアルな空気感”を捉えた写真や動画は、SNS投稿の質を高め、チームの魅力を伝える上で不可欠です。
正直、SNSでの発信がどれだけの影響力を持っているかは未知数です。しかし、実際にInstagramの投稿を見て「雰囲気が良さそうで、ここで野球がしたい」と入団を希望してくれた選手がいたことも事実です。
SNSは、単なる広報ツールではなく、チームの価値観や想いを共有し、仲間を集めるための“もうひとつのグラウンド”。その発信の質を支える、マネージャーの写真・動画撮影といった裏方の貢献もまた、クラブチームとしての大きな力の一部なのです。
まとめ: クラブチーム化は、チームを“本気”で強くする
草野球チームのクラブチーム化に、特別なスキルや莫大な資金が必ずしも必要なわけではありません。最も重要なのは、以下の要素だと考えます。
- 明確な目標設定と方向性の共有: チームがどこを目指すのかを全員で理解する。
- 核となる首脳陣の形成: 責任を持ってチーム運営を推進するリーダーを置く。
- メンバーへの適切な役割分担: 「全員野球」でチームマネジメントに関わる意識を醸成する。
- オープンなコミュニケーション: 意見の違いを恐れず、対話を重ねる文化を作る。
- そして何より、“諦めずに続けること”: 成果が出るまでには時間がかかることを覚悟し、情熱を持って継続する。
時間はかかるかもしれません。多くの困難もあるでしょう。
しかし、その先には、自分たちの手で育て上げた「本物のチーム」で野球ができる喜びが待っています。
あなたのチームも、クラブチーム化という一歩を踏み出すことで、新たな可能性が開けるかもしれません。
その勇気が、チームの未来を大きく変える原動力となるはずです。